こんにちは、こんばんは、コケガエルです。
2000字以内を目標にコンパクトに思い出話をひとつ。
あれは小6の頃だったか。
ゲームソフトなんて贅沢品はそうそう買えるものではなく、ベーマガなどのプログラム掲載雑誌を買ってはせっせと入力し、日々楽しく過ごしていました。
当時僕はMZ-700ユーザー。ベーマガではMZ-700用のプログラムは毎月2本掲載。けど2本なんて、数日で打ち込んで遊び終わってしまうんですよね。そうなると他機種の面白そうなゲームを、羨ましく眺めたり、ハドソン・マイコンソフト(電波新聞社)の広告や、九十九電機の広告、中古マイコンの価格表を舐めるように見て過ごします。買えないのに(笑)
いつものように広告を見ていると、マイコンソフトのページに『当社のゲームソフトは書店にて注文できます』的な一文を発見(記憶では)。この時、ちょうどPCG-700(HAL研究所)を購入したばかりで、パックマンが欲しくて欲しくてたまりませんでした。
MZ-700のゲームといえば、アスキーアートで描かれたようなゲームばかりでしたが、PCGに対応したパックマンは『格段にパックマンらしかった』ので、猛烈に欲しくなったのです。
今で言うと、「グラボを替えたからリッチなゲームを動かしてみたい」な感じですね。
PCG無し(左)と対応版(右)。画像は『MZ-700ソフトウェアカタログ』様より引用させていただきました。
http://we-love-mz.sakura.ne.jp/wiki/?%A5%D1%A5%C3%A5%AF%A5%DE%A5%F3
親の許可を得ると、F書店にダッシュ!店員(爺さん)に「書店で注文~」と説明しても、どうにも要領を得ない顔。田舎ですから、こんな注文は初めてだったのでしょう。
店員は何処かに電話をかけると、僕に「1カ月くらいかかるよ」と言った。
・・・・・・・・・
「え?」
一週間、長くても2週間くらいだと勝手に思っていた(どこかに書いてあったような気もする)ので、思わず声が出てしまった。しかし、F書店に頼るしか購入する術がない僕は、ガッカリしながらも注文をお願いした。その時の店員の面倒くさそうな顔ったら…
ついても無いため息が、「ハァ」と聞こえたような気がした。
そして、注文書に記入し終えた店員は「入ったら電話で連絡するから」と、さらに面倒くさそうに言った。僕は来る時とは真逆のテンションで書店を後にしました。(昭和の、そして田舎の商売なんてこんなモンです)
待った。一日千秋の思いで待った。
何度も本を買うついでに「入っていませんか?」と尋ねたりもした。電話が来ていないので、まだ入荷していない事は分かっているんですけどね。万が一がありますから。
子供は自分に都合の良い「もしかして」に溢れています。そして大人は子供のそんなところが大嫌い。顔を覚えられ、煙たがられていた自覚はありましたが、我慢できませんでした(笑)
そして、1カ月が経ちました。…しかしソフトは入荷しません。
1カ月と1週間、2週間、3週間…何度もカウンターで確認しましたが、不愛想に「まだ」と言われるばかりです。そんな事を繰り返すうちに、店員と僕の態度が逆転します。僕は“1カ月”を大幅に過ぎて尚、一向に入荷する気配が無いことに徐々にイライラし始め、店員は次第にバツが悪そうになっていった。
そして2カ月丁度に、書店から入荷を知らせる電話が鳴った。
僕は自転車を飛ばし、書店に入店。そしてカウンターに着く数メートル前で、いつもの店員と目が合う。
二人とも満面の笑みだ^^
これまで、お互いに不機嫌さをぶつけ合ってきたことが恥ずかしく、ちょっと照れくさい…。しかし、そんな過去も今となっては些細な事です。共通の目標が、今まさに達成されようとしています。
クソガキとジジイの間に、何かが芽生えたような気がしたのは、僕の錯覚でしょうか?
単純に『しつこい小学生から解放された喜び』という線も無きにしも非ず。
僕はポケットに無造作に突っこんだお金を…、店員は棚から商品を取り出す。
店員は、一仕事終えたような爽やかな笑顔で「お待たせしました」と商品を僕に見せた。
.
..
パックマンには違いない…………………けど、これ…
PC-6001用じゃないですかぁ―
数秒前までの笑顔は何処へやら、呆然自失です。
怒りはありません。小6の僕には、ただただ悲しすぎた。
バイトの帰りにスピード違反で捕まり、丸二日分のバイト代を失った時も悲しかったが、この時の悲しみには遠く及びません。僕は悲しみが限界を超えると、感情がフラットになります。僕を捕まえた警察にも「お仕事ご苦労様です」と、毛ほどの嫌味も無くそう思ったものです。
書店の店員に対してもそうでした。怒りも悲しみもない表情で「これは僕が頼んだものとは違います。もう要りませんので大丈夫です」と静かに言った。そして注文書と商品を何度も見返す店員を背に、ゆっくりと店を出ました。
1~2日は落ち込んでいたような気がしますが、そこはホラ小学生です。楽しい事は日々あるので、いつまでも凹んでいる暇なんかありません。ゲーム・三角ベース・缶蹴りなど、すぐに友達と町内を駆け回ります。
そして、あの悲劇から一週間後。再びF書店から「MZ-700用のパックマンが入りました」と連絡が入る。僕は間髪入れずに答えます。
「もう要らないって言いましたよね!」
で、さっさと電話を切りました。ふざけんな馬鹿野郎って感じですよ。
また2ヵ月間も待てないから「要らない」って言ったんだ!
なんで一週間で入荷するんだよ!最初から1週間で取れなかったのか?
間違った時点でもう要らないって言ったよな?
無駄に気を利かせてんじゃねーよ!逆に腹立つわ!
と、眠っていた怒りが大爆発です(笑)
ホントはまだ欲しかったんですよ?けどねぇ。僕の中の何かがソレを良しとしなかった。
その後、母に頼んで郵便振り込みとかそんな感じの通販手続きをし、無事購入。
郵送で届いたものを開封するとき、また6001版が飛び出すんじゃないかと、恐怖でした(笑)
パッケージは700版でホッとしましたが「中身が6001版なのでは?」なんて思ったり。すっかり疑心暗鬼です。もはやトラウマ。
待ち焦がれたパックマンは、期待を裏切らない出来で大満足でした^^
大人になって考えると、店員さんは、楽しみに待っていた小学生をガッカリさせてしまったので、早く届くように手配してくれたんじゃないかと思います。間違いなく。
それを「要らない」と無下にし、他で購入しちゃうんですから子供です。(実際に子供なんですけど)今となっては、素直に「ありがとう」とF書店で購入すれば、店員さんは気持ちよく、僕もその後の手間もなくパックマンを入手できたのにね。
良い経験だったかもしれません。
当時、街には3店の書店がありましたが、今はF書店の1店だけです。子供を連れて本を買うと、書店が返本した子供雑誌の付録をくれたりするので、ウチのチビは大喜びです。近所にTSUTAYAがあるのですが、ついつい遠くのF書店まで足を運んでしまいます。
かつては、立ち読みの子供でごった返していた人気書店だったんですけどねー。今はいつ行っても2~3人しか客がいません。
隣町の大型ショッピングセンターの中に出店しているのと、地元の学校向けに教科書を販売しているので、それで何とか踏ん張っていますが大変だと思います。
子供の頃から親しんでいるお店は、唯一『F書店』だけになってしまいました。
当時足を運んだゲームセンター、デパート、駄菓子屋、お菓子屋、床屋、喫茶店…とにかくなじみの店は、F書店以外全滅です。田舎で35年も経てばそんなものですかね。
だから、つい応援したくなっちゃうのかもしれません。
もし無くなったら………………すごく悲しいだろうなぁ。
AmazonやTSUTAYAに負けずに、いつまでも地元の書店として生き残ってほしいものです。
大きなオチも無くすみません。終わりです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
(結局3000字オーバー、目標達成ならず)