心の名作、ビルディングホッパー(2)

うおお!なにコレ?すっげー面白そう!!!

と、当時中学1年生だったかわいい(?)私の目が釘付けになりました。マイコンBASICマガジン(以下ベーマガ)の表紙をめくると、そこにMZ-700というシャープのマイコン広告があったのです。

と、よくある書き出しですね。当時のその時期、そこがMZシリーズ広告の定位置なのは知っていました。なぜなら私はMZ-700を既に持っていたから(笑)。自分の所有するマイコンが、毎月表紙の裏を陣取っているのは、なぜか嬉しいものです。なのでベーマガを買うと、まずは表紙をめくり広告を見るのがお決まりです。そしてその時が来ました。下の広告です。

SHARP MZ-700広告(これはOh! X掲載)

どうです?「なにこれ?」「しょぼい」と声が聞こえてくるようですね。けどちょっとだけお付き合いを。

 

遡ること1年ほど前にMZ-700本体を購入。このビルディングホッパーの画面が出ている広告は、MZ-700の広告としては中~後期だったような気がします。

HUDSON/緊急発進

この頃はハドソンの『緊急発進』というゲームや、電波新聞社のパックマンなどで遊んでいました。

しかし当時のマイコン少年のトレンドは、ベーマガ等のプログラム雑誌に掲載されたプログラムを入力して遊ぶことです。私も人差し指一本でせっせと入力、ひたすら入力。その苦労も含めて(苦労の分?)すっごく楽しかった。これがマイコンの醍醐味であり良き思い出の一つです。

 

しかし、当時の自分としては楽しい事ばかりではありません。MZ-700ユーザーは、あるコンプレックスを抱えていました。MZ-700(\79,800)はよく言えばリーズナブル、悪くいえばチープなマイコンです。安価だけにグラフィック能力がありませんでした。これはゲーム少年には致命的な弱点です。

MZ-700と全く同時期(1982年11月)に発売されたシャープX1(\155,000)、富士通FM-7(\126,000)は共に強力なグラフィック能力(640×200,8色)を持っていました。価格帯が違うとはいえ同時期にこの差は…子供には残酷すぎる現実です

グラフィック能力を持たないMZ-700は、キャラクタグラフィック(文字や記号)でゲーム画面を組み立てるしかありませんから、それはそれは見劣りしたものです。雑誌で他機種のイケてるゲーム画面を見るたびに、嫉妬と敗北感に苛まれたものです(私だけではないはず)。

電波新聞社/マッピー 左からX1、FM-7、MZ-700 モナリサが素敵ですね(笑)     (出典:youtube)

 

しかし、そんな時なんです。この広告が掲載されたのは。

クレイジークライマーの如く上へ上へとスクロールするであろう画面構成。ディグダグを彷彿させる炎を吐く敵。チープなのに物凄く魅力的に映りました。

 

当時のマイコンのグラフィック能力は高くなりつつありましたが、ファミコンのようにグラフィック画面をスムースにスクロールさせるハードウェアなんて積んでいません。ソフトで出来るほどのパワーもありませんから、市販のゲームといえども固定画面(または画面切り替え)でクリア式のゲームが多く、スクロールしてもモッサリしていました。(市販の高価なゲームはグラフィックが綺麗じゃないと雑誌広告を見たユーザーに訴求できませんから。だからどうしても動きよりも画質に傾倒する向きがあったと思います)

そんな中でのこのゲーム。ダイナミックにスクロールすることは、この広告だけで十分に理解できます。もう妄想がとまりません。すぐさま購入できる方法を調べて即注文です。届くまで一日千秋の思いで、画面写真を眺めながら想像し悶える日々です。届いたゲームは想像通り、いや想像以上でした。軽快な音楽とアクションに魅了され、購入してから半年以上アホのように遊ぶことに。

嬉しかったですねー。画面がショボいことで何かと悲しい思いをしていたのが、そんな事も忘れるほど面白かったし、胸を張って友達にも遊ばせましたよ。「どう?君のマイコンは画面は綺麗だけどこんなに面白いゲームある?」と心の中で呟きドヤ顔をかまします。プレイしている友達もさぞウザかったろうと思います。

まぁ私のウザさは置いておいて、いま語るべきはこのゲームの素晴らしさですよ。グラフィック能力が無いことで成立したゲームデザインはMZ-700という土壌でしか生まれなかったし、支持されなかったと思います。なによりこんなゲーム画面を広告に使用なんてありえませんよね?広告は機能やセールスポイントをより良く見せる場なのに、こんな画面て(笑)

そしてビルディングホッパーはMZ-700でしか遊べない、MZ-700ユーザーの誇りであり永遠の名作になりました。ですよね?。そうなんです(笑)

 

 

 

その後の話です。

購入から1年ほどでしょうか、友達とMZ-700とMZ-2000を2週間ほど貸し合って遊びました。モニター内蔵借りたMZ-2000にはG-RAMボード(+G-RAMページx2)が積まれており、外付けでカラーディスプレイが利用できました。私は高精細なカラーグラフィックのゲームを堪能できたし、友達もそれなりには楽しめたようです。それから10年以上が経ったある日、その友人宅にお邪魔した時でした。貸し合った時の話題になり、その場にいた友達の兄がふと「あの時借りてたビルディングホッパーは面白かったなぁ、俺の中でマイコンゲームのトップ3に入るワ」と言ったのが非常に驚きました。

なぜなら、友達とその兄はMZ-2000、X1c、MZ-2500、X1turboIIIを所有し遊び倒してきた人だから。そんな上級マイコンゲーマー(?)に、MZ-700のチープなゲームが深く印象に残っていた事に驚いたのです。同時に、抱えていたコンプレックスを肯定してもらったような、妙な嬉しさを感ましたね。その時の事はさらに十数年以上経ったいまでも忘れられない記憶です。

 

思い出すまま書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。

ビルディングホッパーについてはこれで終わりです。ゲーム自体のレビューや解説はしません。googleで検索するとyoutubeやニコニコ動画、他にも沢山の方がビルディングホッパーについてとりあげていますので、ソフトの内容に興味の湧いた方はぜひ調べてみてください。

 

ここまで読んでいただいて有難うございました。

同世代の方にほんの少しでも共感をいただけたり、当時を思い出すきっかけになれば幸いです。