サーカス(Exidy/1977)後編

交代した兄のプレイは冴えわたります。みるみるうちにスコアは上がり、ピエロの落下速度もグングンと上がります。すげぇ、アンタすげぇよ。ギャラリーしている僕の心拍数もどんどん上昇し、憎しみが尊敬に変わった瞬間、このゲームにおけるデッドスポットめがけピエロが落ちてきたのです!(前回はここまで)

 

このゲーム、シーソーに乗ったピエロを、落ちてくるもう一人のピエロで打ち上げます。当たり前ですが、シーソーの空いてる方で受けなければなりません。
しかし、稀によく(?)シーソーの右側が上がった(左にピエロが乗っている)状態で、左の隅に向かってピエロが落ちてくる時があるんです。こうなるとお手上げで、受け止めるのは不可能ででした。

これはもう仕方がないと当時の僕は思っていたし、そうならない様にする事が、このゲームにおける上手さ・技術だと思っていました。それに、このデッドスポットがなければ、腕次第ではゲームオーバーにならない事態も考えられます。アーケードゲームでそんな設計はあり得ません。ピンボールにおけるアウトレーン(フリッパーの両外のレーン)のようなこの仕組み。意図したものではないのかもしれないが、この仕組みがゲームをより面白くしているのは間違いありません。そして今まさにそのシチュエーションが起きようとしています。

(あ、やっちゃった)

・・・・・『パン!』

…………は!? え??????????

もう、僕の頭の中ではすでにショパンの葬送行進曲が鳴っていたのに、音もなくピエロが宙に戻っていきます。
このゲーム、シーソーで受けた時に『ブーオン』、風船を割ると『パン!』と効果音が鳴ります。なのでゲーム中は基本的には『ブーオン』『パン!』『ブーオン』『パン!』と延々と繰り返します(例外あり)。なのにこの時は『ブーオン』『パン!』・・・・『パン!』と鳴ったのです。

兄「・・・頭返し」
僕「!?」

兄が言うには、ミスなくゲームを続けある速度までゲームスピードが上がり、落ちてくるピエロが頭から落ちてきて(記憶では)、画面の端で空いたシーソーが届かない場所でのみ、待っているピエロの頭で跳ね返せると言う。

馬鹿な!と思ったが、事実自分の目で見てしまったのだから認めるしかない。
というか・・・すっげーよ兄ちゃん!『頭返し』のネーミングはどうかと思うがマジ尊敬。限定的ではあるし狙ってできる事でもないが、このゲームにおける常識を覆えすテクニックの発見に興奮せずにはいられませんでした。

僕はすぐに再現しようと、この日は遅くまで頑張った。飽きかけていた風船割りが、また楽しくなってしまった。やはり第2次ブームです。腕はさらに上がり『頭返し』も何度も成功。やがて『頭返し』がやりたくてプレイするようになりました。
なんでしょうね。無音で空中に戻る感覚、違和感がクセになるんです。成功した瞬間に背中がゾクっとして、自然に笑みがでてしまうんですよね。
製作者の意図的な仕込みなのか、バグなのかはわかりません。けどゲームが好きな方は覚えがありますよね?この嬉しさ。何なのでしょう(笑)

あと、今になって思ったのですが、夜中にこっそり特訓し、僕を打ち負かした8歳年上の兄にムカつきましたが、あれは遊び相手をしてくれたんだと気が付きましたね(もう高校も卒業していましたから)。ありがとう兄ちゃん。
僕が生意気で、おとな気なくもムキになったんじゃないと思いたい。

そして風船割りの筐体を持っているあなた。
もしご存知なかったら今夜にでも試してみてください。

きっともっと風船割りが好きになりますよ。

 

いないかーそんな人。

 

あ、補足ですが、我が家のサーカス。正しくはサーカス・サーカス(ユニバーサル)でした。
いやーハイボールって本当に良いものですね。ではまた。

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